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太陽光発電の1日の発電量はどのくらい?地域や季節による違いと発電量アップのコツ

太陽光発電システムの導入を検討する際に、「1日の発電量はこのくらいですよ」と提示をされても、相場を知らなければその発電量が多いのか少ないのか判断できません。

また、太陽光発電システムの発電量は季節や地域によっても変化するため、導入にあたってはそれら要因をトータルに勘案する必要があります。

ここでは、太陽光発電システム導入を検討する方に向けて、検討の手助けとなる情報や発電量をアップさせる方法について紹介します。

平均的な1日の太陽光発電量

太陽光パネルによる平均的な1日の発電量は、「1kWあたり、3.4kWh(※1)」です。仮に設置される太陽光発電システムのシステム容量が 4kWであれば、その発電量は「3.4 × 4」で約14kWhになります。4kWのシステムの導入を検討されている方で、14kWh/1日以上の発電量が得られるならば、国内の平均より優れた発電効率を持つと言えるでしょう。

ここで「システム容量」という聞きなれない用語や「kW」・「kWh」といった難しい単位が出てきました。以下で、これらの用語について補足します。

太陽光発電による1日の発電量は「発電能力(システム容量)と環境条件」で決まります。

システム容量とは理想的な条件(一定の気温、一定の日射量、一定の角度)に置かれた場合、どれだけ多くの電力を生み出すことができるのか、という太陽光発電システムの性能を示す指標です。システム容量が 1kWの太陽光発電システムを理想的な条件で運用すれば、1時間に 1kWhの発電量が得られます。

ただし、実際に太陽光発電システムを運用する場合、周囲環境は必ずしも理想的な状況とは言えません。太陽光パネルは夜間に発電することができませんし、曇りや雨、積雪などによって日射量が減れば、それに伴って発電量が減少します。こうした太陽光パネルの性能以外の部分で発電量を左右する要因を、ここでは「環境条件」と呼んでいます。

環境条件は季節によって、また地域によって変化するため、一概に論じることはできません。しかし、国内すべてを平均した環境条件を仮定し、その「平均的な日本」に 1kWの太陽光発電システムを設置すれば、1日の発電量はおよそ 3.4kWhになるということです。

また、「1日の発電量が 1kWあたり、3.4kWh」という数字は、「1日の発電量は、理想的な条件下での3.4時間の発電量と同じ」ということです。国内であれば、季節を通じて 12時間ほど日が出ていますが、それでも天候など様々な外的要因の影響で、ほとんどの時間は理想的な発電ができていないと分かります。

以上のように、太陽光発電システムによる1日の発電量を考える上では、環境条件が重要です。ここからは、この環境条件が地域によってどのように変化するのかを見ていきましょう。

(※1)REN21 “自然エネルギー世界白書2022“より、2021年度の日本の太陽光発電の累積導入量は約7800万kWh(パネル容量DCベース)。特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所(isep)が電力調査統計(資源エネルギー庁)を元に集計した結果では、2021年の太陽光発電年間発電電力量は96.0TWh。これらより、システム容量あたりの1日の発電量(2021年)は、3.4kWh/1日/kW。ただし、この発電量の中には、産業用途の大規模太陽光発電システムによる発電電力量も含まれる。住宅用や一法人が設置する太陽光発電システムの1日の発電量は、3.37kWh/1日/kWより小さくなることが予想される。

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地域による発電量の変化

一般に地域による気候の違いは太陽光発電システムの発電量に対し、以下のような影響を及ぼすことが知られています。

・高緯度ほど(北に行くほど)日照時間は少なく、発電量は低下する

・北海道、東北地方や日本海側地域では、積雪の影響で冬季の発電量が低下する

・日本海側は雨や曇りが多く、1年を通じて発電量が比較的少ない

・内陸部の雨量が少ない地域は発電効率が高い

・気温が高すぎると、太陽光パネルの発電効率が低下し、故障も起きやすくなるため、発電量が低下する

1日の太陽光発電量はこうした様々な要因によって変化します。

 

環境省による太陽光発電導入ポテンシャルの試算

環境省は次世代エネルギー供給に向けた中核事業として太陽光発電システム導入を後押ししています。補助金の拠出はこれから太陽光発電システムを導入する方にとって大きな力となりますが、その他にも導入検討者に有益となる情報の収集・整理・公開を行ってきました。

その1つが、国内主要都市における年平均日射量と年間予想発電量の推定です。

引用元:環境省 | 住宅用等太陽光発電の導入ポテンシャルの再推計

上の表では、年平均日射量は住宅地図データを元に算出され、年間予想発電量はその日射量から算出されています。上で述べた気候との関係や各都市の位置を考慮すると、年平均日射量がなぜこのような数値になるのか、おおよそ理解できるでしょう。

この表では、最も日射量が多いのは宮崎で発電量は1,339kWh/年/kW。最も日射量が少ないのは青森で、発電量は1,105kWh/年/kWとなっています。緯度だけで考えれば、沖縄の那覇で日射量が最も多く、北海道の札幌で日射量が最も少なくなりそうですが、それぞれ積雪や台風の影響もあるため、緯度だけで日射量を判断することはできません。

また、上述したように、気温が高い地域では真夏の熱で太陽光発電システムに悪影響が生じ、理論値通りの性能は発揮されません。そのため、この表からだけでは宮崎が最も発電効率が良い、とは言えません。

各都市にお住まいの方は、上表の「システム容量 1kWあたりの年間予想発電量」に導入しようと考えている太陽光発電システムのシステム容量を掛けることで、その都市における年間の発電量を算出できます。算出した予想発電量と、設置業者の提示する予想発電量を見比べ、導入検討の手助けとしてください。

上の表に記載されていない地域で太陽光発電導入ポテンシャルを知りたい方は、「再生可能エネルギー情報提供システム(REPOS)(※2)」も役に立ちます。こちらでは、市町村レベルで導入ポテンシャルの推定をご覧いただけます。

引用元:環境省 | 太陽光(建物系)の導入ポテンシャル推計について

ここで紹介したREPOSの推定結果閲覧ページでは、「建物系」と「土地系」で別々の算出しています。建物系は「官公庁」、「病院」、「学校」、「戸建住宅」、「集合住宅」、「工場・倉庫」、「その他建物」、「鉄道駅」など、建物全般に設置された太陽光発電システムの設備容量と推計発電量を示しています。他方、土地系には「最終処分場/一般廃棄物」、「耕地/田・畑」、「荒廃農地/再生利用可能・再生利用困難」、「水上/ため池」の数値を表示しています。住宅や会社設備に太陽光発電システムを導入することを検討中の方は、「建物系」の数値を参照すると良いでしょう。

REPOSでは、設備容量(MW)と年間発電電力量(GWh)のみが記載されていますが、年間発電電力量を設備容量で割れば、環境省の推定した設備容量あたりの年間発電電力量を算出できます。

(※2)再生可能エネルギー情報提供システム(REPOS)

 

発電量シミュレーションサイトを活用しよう

ご自身で発電量の計算をするのが面倒な方は、シミュレーションサイトを利用することがおすすめです。サイトによっては、住所(その地域の日射量)だけでなく、家の大きさや屋根の向きなどを考慮して、発電量の計算を行ってくれます。

発電量シミュレーションサイトは太陽光パネル設置事業を推進する会社が運営している場合が多く、以下のようなものがあります。

太陽光発電・蓄電システムシミュレーション(京セラ)

わが家の発電量シミュレーション(SHARP)

太陽光発電導入シミュレーション(LIXIL)

どのサイトも指示の通りに必要事項を入力するだけで、簡単に年間の発電量を算出してくれます。また、いくつかのシミュレーションサイトを併用すれば、精度の高い推定結果を得ることが可能です。

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その他の発電量を決める要因

ここまで、太陽光パネルを設置する環境が発電量に与える影響について解説してきました。しかし、環境条件以外にも1日の発電量を決定する要因は多数考えられます。

 

太陽光パネル自体の発電効率

まず考えるべきは、太陽光パネル自体の発電効率です。太陽光パネルの効率が上がれば、同じ面積、同じ環境条件でもより多くの発電量が得られます。

一口に太陽光パネルと言っても、シリコン系・化合物系・有機系など様々なタイプがあります。現在、住宅用太陽光パネルとして最も広く使われているのはシリコン系です。シリコン系太陽電池は長い実績を持ち、比較的安価で、安定した性能を有します。

化合物系太陽電池は高い発電効率が特徴ですが、高価であり、住宅用太陽光パネルとしては採算が取れません。人工衛星搭載用の太陽光パネルなど、ハイエンド製品として利用されます。

有機系は、薄く、軽量で、曲げられるという他にはない特徴を持つ太陽電池ですが、安定性に乏しく、発電効率も他に及びません。主な用途は地震などの大規模災害対策で、折り畳んで運搬できる携行型太陽光パネルとして使われます。

化合物系、有機系ともに低価格化、高性能化のための研究開発が進められていますが、現在の現実的な選択肢はシリコン系に限られます。シリコン系を詳しく見ると様々な種類があり、パネルの選択によって発電効率の向上が可能です。

一般家庭向けに販売されている太陽光パネルはアモルファスシリコンやシリコン多結晶を利用しています。これらの太陽光パネルは比較的安価に製造できますが、結晶粒同士の境目で電流が抑制され、発電効率が低下します。

対して、PC用の半導体チップなどに用いられる単結晶シリコンならば、結晶粒の境界が少なく、電荷輸送に有利であるため高い効率を有します。ただし、パネル自体が高価です。

ここで述べた各種太陽光パネルにはそれぞれメリットとデメリットが存在します。発電効率のみに着目するならば、化合物系や単結晶シリコン製の太陽光パネルを使えば済む話ですが、事はそう単純ではありません。太陽光発電システム導入や維持に関する費用はもちろん、設置場所や用途に応じて、パネルに求められる性能(耐久性、寿命、形状など)が変わってきます。

また、太陽光発電システムを構成するのは半導体だけではありません。内部構造を保護するガラスや樹脂シート、発電した電力を系統電力に接続するためのパワーコンディショナーなどの電子機器、架台や発電モニター、様々な要素から構成されます。

特にパワーコンディショナーは太陽電池用に開発が急ピッチで進められており、高性能で安価な製品が次々と発売されています。これらトータルでのシステムの性能が発電効率に寄与します。

 

経年劣化や故障

太陽光パネルの性能は様々な要因によって劣化します。長期的な視点で太陽光発電システムを運用するならば、劣化が起きにくい太陽光パネルを選ぶ、または、劣化の原因を取り除くことが重要です。

太陽光パネルの劣化については、当社サイトで過去に詳しく紹介しました。

太陽光発電の寿命は何年?劣化原因や寿命を伸ばすポイント(http://sanei-e.com/media/6681/)

リンク先の内容を簡単にまとめると、劣化原因は主に以下の3つに分類されます。

・ホットスポット

・層間剥離(そうかんはくり)

・塩害や積雪などの環境要因

ホットスポットとは、電気系統の故障やパネルのひび割れにより、太陽光パネルが部分的に熱を帯びる現象です。高温になると太陽光パネルは発電効率が低下してしまいます。

層間?離とは、パネルを構成するガラスや樹脂シートなどが互いにはがれ、その間に水が入り込んでしまう現象です。また、海岸付近や日本海側に設置された太陽光パネルは塩害や積雪の影響を受けます。この他にも、落雷、強風、地滑り、獣害など、様々な要因によって太陽光パネルは破損、または劣化します。

劣化を防ぎ、高い発電効率を維持するためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。また、適切なメンテナンスを実施している太陽光発電システムは故障した場合にも無償で修理や補償を受けられることが一般的です。太陽光発電システム導入による費用を無駄にしないためにも、太陽光パネルのメンテナンスは定期的に実施してください。また、太陽光パネルに関して想定外の事故が起きた際には、メーカーや施工業者に相談しましょう。

 

発電効率を高める様々な工夫

ここからは発電効率を高める方法について紹介します。

 

高性能で安価なパネルの導入

シリコン系は太陽光パネルの中では比較的長い歴史を持ち、直近での目立った性能の向上は少ないです。しかし、太陽光パネル生産に関する技術が広く知られるようになり、海外に生産拠点が移った結果、安価なパネルが大量に生産されるようになりました。こうした影響により、太陽光パネルの導入価格は継続的に低下しています。

また、近年では「ペロブスカイト構造」と呼ばれる特異な結晶構造を持つ有機・無機複合型の新たな太陽光パネルが開発され、有機系が持つ従来の欠点を克服しつつあります。ペロブスカイト型太陽電池は有機系の特徴(薄い、軽い、など)を引き継ぎつつ、効率と安定性を高めてきました。世界的な半導体不足もペロブスカイト型太陽電池推進の原動力となっています。ペロブスカイト型太陽電池は既に一部で実用化が始まっていますが、今後はさらなる利用拡大が予想されます。

太陽光パネル技術は日進月歩で進化しています。最新の技術を導入することで、コストを上げずに、発電量を増やすこともできるかもしれません。

高性能なパネルを安価に導入したい場合には補助金の活用も視野に入れましょう。設置費用や補助金に関しては以下リンクでも詳しく解説しています。是非併せてご参照ください。

 

電力管理システム

効率的な電力利用には「電気を生み出す側」だけでなく、「電気を使う側」の工夫も重要です。太陽光発電システムで生み出した電力を効率的に運用できれば、発電量を増やした場合と同じ効果が得られます。

太陽光発電システムで生み出した電力の中には使われず、無駄になってしまうものが多く含まれます。例えば、太陽光発電システムで発電した電力は直流電力ですが、これを一般の電力系統と連結するためには交流電力に変換する必要があります。直流から交流に変換するのがパワーコンディショナーと呼ばれる装置ですが、このパワーコンディショナーの変換効率は95%程度であり、変換時に5%程度の電力が失われます。

また、電力が蓄電・放電される際にはそれぞれ5%程度の電力が失われますし、送電線を流れる電力は持続的に失われていきます。基本的に電力は蓄えたり、遠くへ輸送したりするよりも、作ったその場ですぐに使う方が無駄が少ないです。

電力需要と供給のバランスは電力管理システムによって調整できます。家庭レベルではシステム自体が小さいため、電力管理の恩恵はあまり受けません。しかし、工場やオフィスビルであれば、電力を融通できる幅が広がるため、電力管理システムの効果が最大限に発揮されます。

電力が余っている場所から電力が足りない場所へと電力を受け渡し合えば、それまで無駄になっていた電力を有効活用できます。

 

保守・管理システム

太陽光パネルの発電効率を高い状態で維持するためには定期的なメンテナンスが欠かせません。しかし、大規模な発電システムになるほど、メンテナンスが必要な範囲が広がり、維持管理コストが膨れ上がります。

そうした状況で効果的に機能するのが、保守・管理システムです。保守・管理システムにも様々なものがありますが、主な機能は太陽光発電システムを流れる電流や駆動電圧、及び発電効率の監視です。その他、カメラを使ってパネルを物理的に監視する場合もあります。

保守・管理システムは、ここで得られた様々な情報を気象条件や平常時の発電量などと関連付けて分析し、劣化や故障を素早く検知することが可能です。また、劣化原因や故障箇所を特定し、その原因を素早く取り除くことに寄与します。

劣化原因を素早く特定することができれば発電効率低下による損失を最小限に抑えることができ、原因究明やメンテナンスにかかる費用を減らすことができます。

 

まとめ

太陽光発電システムは、太陽光を受けた分だけ発電するというシンプルな仕組みを持っていますが、細かく見ていけば気候や気温、パネル劣化の程度など、様々な要因によってその発電量が変化します。

当社では、これまで太陽光発電システムの発電量に影響を与える様々な要因を分析し、お客様の環境に合った太陽光発電システムをご提案して参りました。システムの導入や、発電効率アップの方法に関して分からないことがあれば、是非当社にご相談ください。

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この記事を書いた人

本田陸

本田陸

株式会社サンエー マーケティング部所属。2022年より企業向けの環境に関するコラムの執筆を開始しました。マーケティングの分野に関して、中学校での職業講話に登壇させていただきました。脱炭素化社会の構築に向けて、環境に関する情報を発信しております。趣味は筋トレとオンラインゲームで、社内のe-sports部で社会人向け大会にも出場しました。