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太陽光発電の「耐用年数」と「寿命」の違いは?減価償却の計算方法も解説!

企業の節税対策としてもおすすめの、太陽光発電所の設置。太陽光発電を運用するのに知っておくべき知識として「耐用年数」があります。

太陽光発電設備は固定資産として減価償却の対象になります。特に法人においては、太陽光発電を節税対策として運用しているケースも多くあるため、事業計画をスムーズにするためには耐用年数は重要です。

今回の記事では、耐用年数とは何かや、寿命との違い、減価償却の計算方法について解説します。

太陽光発電の耐用年数とは?寿命との違い

耐用年数とは「法定耐用年数」ともよばれ、減価償却資産の計算をするための基準となるものです。

一般的に設備の寿命のことを耐用年数ということもありますが、法定耐用年数の場合は、法律で定められている使用可能な見積年数のことをいいます。法定耐用年数は、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」によって資産ごとに細かく分類され、年数が規定されています。

耐用年数と同意として扱われがちな「寿命」という言葉は、設備の使用限度を表すケースが多くみられます。ただし、寿命は「一般的にこのくらい」といわれている使用期限であり、明確な基準はありません。そのため「耐用年数=寿命」は誤った認識となりますので、注意しましょう。

太陽光発電で耐用年数が必要なのは、減価償却資産として会計処理が行なえるためです。減価償却資産とは、事業のために用いられる設備や施設のことで、使用するにつれて価値が減っていってしまう資産のこと。機械や自動車、建物などは、古くなればなるほど価値が落ちるので、減価償却資産となります。

太陽光発電は固定資産の対象となるため、減価償却資産として会計処理をすることで節税効果が得られます。

 

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太陽光発電の耐用年数は何年?超えても使える?

太陽光発電の法定耐用年数は17年です。耐用年数については、国税庁「減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和四十年三月三十一日大蔵省令第十五号)」で定められており、太陽光発電は、この中の「別表第二 機械及び装置の耐用年数表31番 電気業用設備 その他の設備 主として金属製のもの」)に該当します。

ただし、これは太陽光発電を売電目的で設置している場合の耐用年数です。例えば、自動車を生産するための電力を自家発電するために太陽光発電を設置している場合は、太陽光発電は「自動車・同附属品製造設備」となり、「別表第二 機械及び装置の耐用年数表31番 電気業用設備 その他の設備 主として金属製のもの」ではなく、同じく別表第二の「23番 輸送用機械器具製造業用設備」の9年が適用されます。

このように、何の目的で太陽光発電設備の設置をしているかによっても法定耐用年数の扱いが変わるため、注意が必要です。10kW未満の太陽光発電は基本的には住宅用となるため、固定資産税の対象とはならず、法定耐用年数の規定はありません。

しかし、個人の場合でも10kW以上の太陽光発電は固定資産税の対象となり、法定耐用年数は17年で減価償却が必要です。事業主の場合は、10kW未満の太陽光発電であっても、自宅兼事務所などで太陽光発電を設置して事業用としても電力を利用している場合は固定資産税の対象になり、法定耐用年数17年で減価償却を行ないます。

 

太陽光発電の寿命は長い!

法定耐用年数はあくまでも会計処理に使うための年数であって、いわゆる「寿命」ではないため、耐用年数を超えたからといって使えなくなるということはありません。

太陽光発電は発電を行なうソーラーパネルと、発電したエネルギーを使えるように変換するパワーコンディショナー(パワコン)から成り立っています。太陽光発電の寿命については、太陽光発電の歴史がそもそも長くないため正確なデータはありません。

ただ、実際に日本で見られる太陽光発電から推測すると、「設備が使用できなくなる」と考えられている寿命は一般的に、ソーラーパネルは20~30年、パワーコンディショナーは10~15年といわれています。

日本でもっとも古いといわれているソーラーパネルは、1983(昭和58)年から奈良県の壷阪(つぼさか)寺に設置されたシャープ製のもの。大観音像の照明として使われており、2011(平成23)年に性能評価試験を行なった際もほとんど劣化がなく、製造時と同水準の発電が行なえていたことがわかっています。

日本にはほかにも30年以上、現役として発電を続けている太陽光発電設備があり、それらを研究材料として、今後はさらに寿命が長い太陽光発電が生まれることが期待されています。

 

太陽光発電の減価償却とは?

先述したように、事業に用いる設備で、年数の経過とともに価値が落ちていくものを減価償却資産といいます。ちなみに、骨董品や土地のように、年数を経たからといって価値が落ちないものの場合は、減価償却資産とはみなされません。

減価償却資産は、取得時に全額経費として計上はせず、減価償却資産の使用可能期間を通して経費計上していくこととされています。

企業において太陽光発電を減価償却するメリットは節税効果が得られることです。太陽光発電の法定耐用年数である17年にわたって、取得価額を分割して経費として計上することができるので、納めるべき法人税を減らすことができます。

このあと、減価償却の計算方法については詳しく解説しますが、法定耐用年数17年にわたって毎年どのくらいの経費が計上できるかが先に計算できてしまうのもメリットのひとつです。
毎年の経費額がわかるため、事業計画が立てやすくなります。

ただし、法定耐用年数が1年未満のものや、取得価額が10万円未満のものは減価償却せず、取得した年に必要経費として計上します。また、屋根材と太陽光発電パネルが一体型になっているものは、パネルだけを容易に移動することができないため固定資産の対象にはならず、減価償却はできません。

 

減価償却の計算方法の「定額法」と「定率法」の違い

減価償却の計算方法には「定額法」と「定率法」の2種類があります。計算方法は自由に選択できますが、選択した償却法は3年間変更不可なので、それぞれの計算方法やメリットをふまえて選択してください。

定額法

定額法とは、期間中の減価償却費が毎年同額になる計算方法のことです。

【定額法の計算方法】
①購入額÷法定耐用年数
②購入額×定額償却率

定額法は①または②の計算方法で求められます。②の定額法償却率は1÷耐用年数で求められ、割り切れない場合は小数点第3位を繰り上げて計算します。法定耐用年数17年の場合は1÷07=0.0588…となるため、0.059となります。

例えば3,400万円の太陽光発電の場合、

①3,400万円÷17年=200万円
②3,400万円×0.059=200.6万円

となります。

定額法は計算方法が明瞭でわかりやすく、事業計画が立てやすいのがメリットです。定率法に比べて初年度の減価償却費が少ないので、設置初年度に事業全体の利益が少ない企業や、利益を多く計上したい企業に向いています。

定率法

定率法とは、毎年一定の割合で減価償却費を計上する計算方法のことです。

【定率法の計算方法】
初年度:購入額×定率償却率
2年目以降:(購入額-前年度までの減価償却費の合計)×定率償却率

耐用年数17年の場合、定率償却率は法律で0.118と定められています。

3,400万円の太陽光発電の場合だと、

初年度:3,400万円×0.118=401.2万円
2年目:(3,400万円ー401.2万円)×0.118=約353.9万円

となり、定額法に比べて初年度に計上できる額が多いことがわかります。そのため、定率法は設置した年に事業所得が多いなど、利益を圧縮したい企業におすすめです。

 

中古の太陽光発電も減価償却が可能!

太陽光発電は20年~30年と長く稼働できるため、中古の発電所も多く出回っています。中古の太陽光発電も固定資産になるため、減価償却費が計上できます。

中古の耐用年数の計算方法は以下の2つです。

①法定耐用年数17年を経過している場合

17年(法定耐用年数)×20%で求められますが、3.4年となるため、小数点を切り捨てて耐用年数は3年です。

②法定耐用年数17年に満たない場合

(17年ー稼働年数)+(稼働年数×20%)

たとえば、5年稼働した中古の太陽光発電の場合、以下のような計算になります。

(17年ー5年)+(5年×20%)=13年

中古の太陽光発電の場合、前の所有者が減価償却を終えていることがあります。しかし、所有者が変わった時点で減価償却が可能になります。太陽光発電は減価償却による節税メリットがありますが、耐用年数を超えると節税効果がなくなります。そのため、耐用年数を超えたら売却して売却益を得るのもひとつの方法です。

 

太陽光発電に使える減税制度もチェック

太陽光発電は減税の恩恵も受けることができます。減税制度には以下のようなものがあります。

中小企業経営強化税制

中小企業経営強化税制は設備投資税制ともよばれます。青色申告をする資本金1億円以下の中小企業・個人事業主が対象です。

「設備費用の税額を最大10%控除できる税額控除」または「即時償却」のいずれかを選択できます。対象となる太陽光発電は、すべて自家消費する場合か、余剰売電はするが自家消費率が50%を超える場合です。

中小企業投資促進税制

中小企業投資促進税制も、青色申告をする資本金1億円以下の中小企業・個人事業主が対象です。「30%の特別償却」または「7%の税額控除」が選択できます。

対象となる太陽光発電は、すべて自家消費する場合と余剰売電をする場合ですが、余剰売電は自家消費率の定めがないため、対象となる範囲が広くなります。

再生可能エネルギー発電設備に係る課税標準の特例措置(固定資産税)

再生可能エネルギー発電設備の固定資産税を軽減する特別措置です。

太陽光発電設備はFIT・FIP制度の認定を受けていないものに限られます。しかし、3年分の固定資産税の課税標準が、1,000kW以上の場合は3/4(7/12~11/12)、1,000kW未満の場合は2/3(1/2~5/6)の割合に軽減されます。

 

耐用年数を超えても長く使う方法とは?

太陽光発電の法定耐用年数は17年ですが、日本ではそれよりも長く活躍している発電所も多くあります。一般的に20年~30年は十分発電可能といわれている太陽光発電ですが、寿命を延ばすためには適切なメンテナンスも必要です。

 

太陽光発電の経年劣化の原因とは?

太陽光発電のソーラーパネルは経年劣化していきます。経年劣化の原因として多いケースには以下のようなものがあります。

ホットスポット

ホットスポットとは、ソーラーパネルの一部分に強い抵抗がかかり、その部分だけ熱を帯びてしまう現象のことです。

発電量を減少させたり、故障の原因になったりするため、注意が必要です。

ホットスポットは、電気回路や配線の不備、パネルに生じたヒビといったパネル自体に問題がある場合のほか、落ち葉や鳥のフンなどによる汚れ、周辺の木や建物の影など、外的要因が原因で生じるものがあります。

層間剝離

層間剝離はパネル内部に空気や水が侵入して、パネル内の樹脂が劣化してしまう現象です。

層間剝離が起きると、発電量が減少し、パネル全体の劣化につながります。層間剝離が発生している場所は白く変色するという特徴がありますが、実際には白く変色した部分以外にも影響を及ぼしている可能性が高いです。

パワーコンディショナーは経年劣化必須と考える

ソーラーパネルで発電したものを電気へと変換する役割をもつパワーコンディショナーも経年劣化します。ただし、パワーコンディショナーはいわゆる「消耗品」です。

10年~15年で交換必須とされているため、必要経費として考えておく必要があります。

 

太陽光発電の経年劣化を防いで寿命を延ばす方法

太陽光発電のソーラーパネルの経年劣化を防いで寿命を延ばす方法をご紹介します。

メンテナンスを定期的に行なう

ホットスポットが生じてしまう原因は、ソーラーパネル自体に問題がある場合もありますが、メンテナンス不足によって起こっているものも非常に多いです。

降雪量が多い地域では、雪の重みでソーラーパネルにダメージを与えてしまうことも少なくありません。また、ソーラーパネルについた汚れがホットスポットの原因になっていることは多く、放置すると熱を帯びすぎて火災の原因になることもあります。

ホットスポットの原因である汚れは、メンテナンスをきちんと行なっていれば防げることがほとんどです。定期的な点検や清掃をすることで、発電量低下や火災のリスクを減少させることができます。

遠隔管理システムで発電量をチェックする

遠隔管理システムは、発電所から離れた場所で発電量を確認できるシステムのことです。パソコンなどのほか、スマートフォンでチェックできるものもあります。

こまめに発電量をチェックしておくことで、発電量が低下したときなど異常が起きたことを早期に発見し、早急な対応ができます。

 

まとめ

太陽光発電の法定耐用年数は17年。

いわゆる使用期限の限界を示す「寿命」とは違い、会計処理上、必要となる基準として法律で定められています。そのため、法定耐用年数がきたからといって、ただちに使えなくなるというものではありません。

日本では、30年以上ほぼ性能が落ちることなく、発電し続けているソーラーパネルもあります。太陽光発電は減価償却資産として経費計上することができ、その計算に法定耐用年数が必要になります。

減価償却の計算方法には、毎年一定額を経費として計上する定額法と、初年度に大きく費用計上ができる定率法の2種類があります。それぞれ節税メリットが異なりますので、事業計画や資金計画に合わせた計算方法を選ぶとよいでしょう。

あわせて、太陽光発電が対象となる税制優遇措置も適用できれば、大きな節税効果を得ることができます。法定耐用年数に関わらず、比較的寿命が長いソーラーパネルですが、経年劣化もあります。少しでも長く活用するためにも、メンテナンスや点検は怠らないようにすることが大切です。

株式会社サンエーは、太陽光発電の導入に向けた設計から施工、導入後のアフターケアまですべてをサポートいたします。お気軽にお問い合わせください。

 

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この記事を書いた人

本田陸

本田陸

株式会社サンエー マーケティング部所属。2022年より企業向けの環境に関するコラムの執筆を開始しました。マーケティングの分野に関して、中学校での職業講話に登壇させていただきました。脱炭素化社会の構築に向けて、環境に関する情報を発信しております。趣味は筋トレとオンラインゲームで、社内のe-sports部で社会人向け大会にも出場しました。