スタッフ不在で見学できる「無人モデルハウス」が話題

営業担当者がその場に立ち会うことなく住宅見学ができる———千葉県君津市にある「無人モデルハウス」に注目が集まっている。仕掛け人は電気設備工事を皮切りに、住宅や再生可能エネルギーの販売など幅広く事業展開するサンエーの庵﨑栄社長。コロナショックの影響をもろともせず、今もなお多くの見学客が同社のモデルハウスを訪れている。
「コロナ下における最大の懸念事項は何と言っても『他人との接触』をどう避けるか。その点、当社の無人モデルハウスでは営業担当者が一切同席しませんし、鍵の開け閉め、電気や空調等の操作もすべてスマートフォンから行うので、感染リスクを最小限に抑えた状態で見学することができます」(庵﨑社長)

IoTで設備を管理
通常の住宅見学では1棟につき最低1人のスタッフがモデルハウスに常駐し、見学客の呼び込みから案内まで手取り足取り面倒を見てくれる。これに対し、スタッフが待機していない無人モデルハウスはどのように見学するのか。実際に流れを庵﨑社長に説明してもらおう。
「見学の要件として当社のLINEアカウントの友だち登録をお願いしています。事前に友だち登録を済ませておくか、モデルハウスの掲示板に貼ってあるQRコードを読み取ることでも登録は可能です。登録後はLINEで『これから見学します』というメッセージを営業所にいるスタッフに送信し、玄関を開錠。お客様には心ゆくまでモデルハウスを見学してもらい、見学後もお客様からの『これから帰ります』というメッセージをスタッフが確認したうえで施錠します。また、各部屋には設備の音声案内が起動するQRコードを設置しているので、疑問点が生じてもスタッフに質問する必要はありません」
モデルハウスのセキュリティーは同社が開発したIoTシステム「S-REMOS」(エス・リモス)によって厳格に管理されており、設備の操作もすべてS-REMOSで行う。S-REMOSは通常のアプリストアからダウンロードできるので事前に登録を済ませておくとスムーズに見学することができる。ちなみに、「ダウンロード料金は一切かかりません」(庵﨑社長)。
なお、スタッフはモデルハウスから車で10分ほど走ったところにある営業所に駐在しているため、非常事態が発生してもすぐに駆け付けることができる。が、スタッフがモデルハウスに行く目的は見学客が帰った後の清掃や原状復帰がほとんどだという。

マイホームでの生活を体験
同社では「誰もが気兼ねなくマイホームを買えるように」(庵﨑社長)という想いのもと、20~30代の比較的若い世代を住宅販売のターゲットとしている。そんな彼らの購買心理を分析することで、無人モデルハウスのアイディアが生まれたのだという。
庵﨑社長の話。
「住宅展示場に足を踏み入れると各メーカーの営業マンから声をかけられたり積極的な売り込みを受けたりするわけですが、物静かでおとなしい人が多い若者世代にとって猛烈な売り込みはとかく敬遠されがち。そんな若者世代をいかに取り込むか考えたとき、S-REMOSを活用した無人見学の仕組みを思い立ちました」
従来の住宅見学とは一線を画す「スタッフが常駐しない」というアイディアに社内でも戸惑いの声が上がり、特に営業部門からは「商談につながるイメージが湧かない」という意見が多く寄せられた。そこで庵﨑社長は、見学から商談までを一気通貫で展開できる仕組みを考案する。
「商談につなげるには見学に訪れたお客さまのアフターフォローが重要だと思い、LINEの友だち登録とアンケートへの回答を見学の条件にすることでお客さまとのつながりを保つようにしました。見学後の熱を冷まさないために翌日にはお客さまとコンタクトを取り、見学の感想や持ち家に関するニーズなどをヒアリングすることで具体的な商談へと展開しています」(庵﨑社長)
さらに、見学客の購買意欲を促進するために、モデルハウスの庭でバーベキューや花火などを楽しめるイベントを定期的に開催。マイホームでのくらしを疑似体験し、「こういう家に住んでみたい」と感じさせる取り組みが商談を大きく後押ししているようだ。

「コロナ下でも成果を挙げる」
2017年に1棟目のモデルハウスが完成して以降現在までにのべ1200人が見学に訪れ、販売実績も100棟超を記録。特に「家族以外との接触を気にすることなく見学できる」ことが話題を呼び、緊急事態宣言が発出された4月以降も家族連れを中心に見学客が訪れ、直近の数か月間で4件の制約に至った。
庵﨑社長も「スタッフが一切立ち会わないという前代未聞の営業手法ですが、実際に見学に訪れたお客さまからも『他人の目を気にすることなく隅々まで見学できてよかった』『コロナウイルスの感染を気にすることなく一軒家での生活を体験することができた』との声が多く寄せられています」と相好を崩す。
5月には無人モデルハウス事業をパッケージ化し、中小ハウスメーカーや工務店に販売するという新たな取り組みにも着手。商談会に参加した企業の反応も良く、地方のハウスメーカーを中心に1か月で10件ほど受注するなど、成果をあげている。
新型コロナ感染症の第2派、第3派が懸念されるなか、他人との接触を気にすることなく見学できる無人モデルハウスはポストコロナ時代における“新しい住宅見学”のあり方を示している。
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